西条湧水調査プロジェクト

西条の泉とその生物

はじめに
西条市には高縄山系及び石鎚山系の裾野に扇状地が広がり、その先端には多数の湧水地が存在するとされる。
それらの一部は、文献や行政資料に記されているものの、これまでまとまった資料はなく、
生物相についての調査は行われていなかった。
西条市は地下水に恵まれ、「うちぬき」の存在は西条市の代名詞ともいえるが、
湧水地の存在については市民の認識も高いとはいえず、湧水地保全の基礎資料を整備するため調査を実施した。

調査方法

既存の文献・行政資料及び聞き取りにより西条市内の湧水地を特定し7月から9月の間に現地調査を行った。
現地では、湧水地の位置を地図上に記し、周囲の環境、護岸の様子、大きさ、水温、水深を計測した。
生物相については、水草、両生類、貝類、魚類を記録した。魚類は潜水目視により観察した。
調査には、西条自然学校のメンバーのほか、愛媛県立西条高等学校物理部の生徒が参加した。

結 果

既存の文献、聞き取り、行政資料等により、西条市内で71箇所の湧水地が確認された。
現地調査を行う前の聞き取りにおいて、パイプを打ち込み地下水を自噴させる「うちぬき」と、
自然に湧いていた湧水地を掘ることでより多くの湧水を確保した。
「いずん堀り」、「自然湧水地」の三形態が混同されていることが明らかになった。
「いずん掘り」、「自然湧水地」のうち、所在が不明なものや、埋められてしまったものもあり、43箇所を現地で確認することができた(9月18日現在)

西条市の泉の分布

確認された生物は水草26種、両生類6種、貝類6種、魚類17種であった。
特筆すべき種としては、愛媛県平野部で減少しているトノサマガエルや水草ではテイレギが確認された。
一方で外来種であるオオフサモの出現頻度が高かった。 

考 察

現在、調査を継続中であるが、魚類においては湧水地の規模、河川との連続性が出現種の多さに
影響している可能性が示唆された。トノサマガエルは、愛媛県平野部の水田で著しく減少した種であるが水田内にある2箇所の湧水地で生息が確認された。
トノサマガエルの減少には稲の栽培品種の変化による水田内の水管理が影響したとされるが(村上・大澤2008)水田内に湧水地が維持されてきたことによりトノサマガエルの生息が維持されてきたことが考えられる。

今後、今回の調査結果を地域の方々に伝え、湧水地の保全に繋がる活動を行っていきたい。

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